本研究課題では、提案するガラスと空気の境界面(曲面)における光の全反射特性を利用した全く新しい原理のマイクロホンが、超広帯域・大音圧用として実用可能であることを実験的に示すとともに、実用の際に問題になるいくつかの事項について検討しておくことを目的としている。 平成22年度ではまず、それまでの理論的・実験的研究の成果をまとめるとともに、検討課題の一つであった周囲環境の変動に対する補償法の検討を行い、補償が可能な一つの具体的方法を示し、それらの結果について学会等で発表した。ただし、補償方法の実現については今後の課題である。 次に、本マイクロホンのプロトタイプを製作し、動作確認を行った。光源部(半導体レーザ)、センサ部(ガラス)、受光部を一体化した簡易マイクロホンヘッドを製作して音圧検出実験を行うとともに、その感度特性を測定した。本マイクロホンの音圧感度はセンサ部の曲面の曲率半径で決まり、半径が大きいほど感度は大きくなるが、現状においては、製作技術の制約のために曲率半径は11mが限界であり、通常の大きさの音圧が測定できるほどの感度にはなっていない。しかし、130dB以上の音圧の測定は容易であり、大音圧用マイクロホンとしての実用の可能性が実験的に示された。本マイクロホンはセンサ部に可動部を持たないため、極めて大きい音圧が測定でき、さらに圧力センサとしての可能性もある。 実験では音源として、発振周波数40kHz、110kHz、200kHzの超音波振動子を用いた。現段階でのS/Nはあまり良くはないが、それぞれの周波数の音圧を検出することができた。さらに高い周波数でも測定できることは原理的にも明らかであり、超広帯域マイクロホンとしての実用が可能である。これらの実験結果についても学会等で発表した。
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