研究概要 |
HDDのヘッド位置決め制御など,ナノスケールサーボ制御では要求精度が著しく高いため,位置決めの際に生じる機械共振の残留振動が無視できない。この問題に対しては,制振軌道設計が重要となるが,入力の時系列データをオフラインで計算してメモリに保存し,それを順次与えるといった手法が多い。しかし,それでは,制御対象の特性が変動した場合,再度オフラインで軌道を再設計しなければならない。また,オフラインで計算した軌道を記憶しておくために大量のメモリが必要となる。 そこで,本研究では多項式を用いて入力をオンライン生成することを考え,その基礎となる多項式型終端状態制御法について検討を行った。多項式型終端状態制御では,多項式の係数だけをメモリに記憶すればよいので,メモリの低減につながる。また,多項式の係数をオンラインチューニングすることで,制御対象の変動にも対応できる。そして次の結果を得た。(1)多項式に時間対称性を仮定すると,より低次の多項式で従来と同程度の性能が達成できる。(2)多項式に数ステップの時系列データを組み合わせると,常に解が存在することを保証でき,性能向上にもつながる。(3)入力の飽和を考慮した設計を行う場合,多項式に時間対称性を仮定すると性能が向上する。 これらの有効性については,ハードディスクベンチマーク問題の制御対象や,レーザ加工で用いられるガルバノスキャナモータの制御系を用いて,シミュレーションにより検証した。
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