本研究では、エネルギー・環境問題の解決手段として注目されている燃料電池のセパレーターや水質改善システムのろ過装置に用いられる薄膜生成に着目し、熱可塑性超薄膜のリサイクルシステムとして将来期待されているデスクトップ型次世代射出成形機の基幹技術について検討してきた。小型電動射出成形機には、従来の力覚センサと同等の検出精度を有するセンサレス力覚フィードバック系の設計法を確立する必要となる。 当初2年間においては、トルク指令値に高調波成分を重畳させた場合、力覚推定値が振動するものの推定精度が向上する事前研究成果を応用し、高調波重畳による高精度力覚推定アルゴリズムの設計方法を確立した。さらに、重畳する入力信号の振幅、周波数、位相を考慮した評価関数を完成させ、厳密な周期信号の最適化について検討した。また、高次反力オブザーバを用いた力センサレス圧力制御の実用化に向けて、保圧工程の過渡状態に適合した高次反力オブザーバと保圧工程の定常状態に適合した高次反力オブザーバの両方を1つのオブザーバ構造で実現できる手法について検討を図った。 そこで、平成24年度においては,改良したセンサレス力覚推定アルゴリズムにプラスチック流体モデルを付加した力覚フィードバック系を成形機全3軸に適用する前準備を行った。まず、金型内のプラスチック樹脂の反力を考慮した高精度な力覚情報獲得方法の足掛かりとして、プラスチック樹脂の物理モデルを力覚推定アルゴリズムに取り入れ、力覚推定値と実測値との比較検討や物理モデルの妥当性を検討しながらセンシング精度を高めた。これらの成果は、平成24年度計測自動制御学会四国支部学術講演会において、「プラスチックの粘弾性を考慮した射出成形機の反力推定」として発表している。また、平成25年度電気学会産業応用部門大会にて、実装を意識したオブザーバの詳細な設計方法について講演を予定している。
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