研究概要 |
本研究の目的は実用的な飛行船の自動航行制御システムを開発し,無人飛行船を用いた飛行実験により有効性を実証することである.平成23年度の具体的な研究成果は以下のとおりである. 1.テザー式小型飛行船による風の時系列データの取得と蓄積:屋外飛行のための飛行船の自動制御システムの設計やシミュレーションなどに行う際,実際の風の時系列データなどが必要である.前年度のシステムを改良し,3軸姿勢角センサー・GPS・風速・風向計などのセンサーを搭載し,無線LANにより各種データを地上にリアルタイムで無線送信できるテザー式の小型飛行船システムを製作した.屋外で風の時系列データや飛行船の運動データなどを測定し,データの蓄積・解析を行った. 2.外乱適応制システムの設計:飛行船の動きなどのデータを用いて風から受ける力(風力)を推定・補正し,オンラインで制御器を自動調整することで,風外乱の状況下で船首をすばやく風に向け,同時に与えられた目標軌跡にすばやく追従し,ある与えられた領域内にとどまり続ける新しい適応コントローラを導出した.本年度は追従可能な目標軌跡のクラスを拡張し,制御系の安定性の保証を行なったことが新しい成果である.その結果,提案するコントローラは,風外乱を受けても,船首をすばやく風に向け,同時に与えられた目標軌跡への大域的漸近追従性とシステムの安定性を保証できるという,優れた利点を有する.数値シミュレーションにより有効性を検証した. 3.揺れなど抑える飛行船制御システムの解析と設計:まず,揺れを抑える飛行船制御システムの検討に必要なパラメータ(飛行船の空力係数など)の同定を実験により取得した.その結果に基づき,プロペラを工夫した新しい飛行船システムを提案し,数値シミュレーションにより,プロペラの配置や位置などの解析と最適設計を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
揺れを抑える飛行船制御システムの設計および屋外用の実験装置の製作に関しては,検討に必要なパラメータの同定実験が遅れたため,それらの作業は交付申請書のスケジュールに対して少し遅れている.一方,小型飛行船の運動データの取得と解析,および外乱適応制御システムの設計などの理論研究は,交付申請書の記載とほぼ同じで順調に進んでいるため,全体としてみると,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
上記の項目11に記載のとおり,風の時系列データの取得と解析,および外乱適応制御システムの設計などの理論研究は,交付申請書の記載とほぼ同じで順調に進んでいるが,揺れを抑える飛行船制御システムの設計および屋外用の実験装置の製作に関しては,少し遅れている.今回の課題では,外乱適応制御システムの設計は最重要の研究課題であり,性能評価用の屋内実験機はすでに製作済みであるため,平成24年度の前半では,まず屋内実験により制御性能の実証を行い,外乱適応制御システムの設計の研究を完了させる予定である.そして平成24年度後半では,揺れを抑える飛行船制御システムの設計および屋外用の実験装置の製作・屋外実験の作業を進めていく予定である.
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