研究概要 |
本研究の目的は,数式モデルを作成することなく,過渡応答データを直接に用いて,非線形制御器を設計する方法を与えることにある.以下の点を明らかにした. 1)データ駆動設計法によるゲインスケジュールドPID制御器の構成 非線形系では動作点の変動により,各動作点周りでの動特性が動作点に依存して異なる.そこで,各動作点周りで得られた過渡応答データからPID制御器を設計し,それを線形補間することでゲインスケジュールド制御器を構成する方法をすでに与えていた.今回はこれをRBF(放射基底関数)を用いて滑らかに近似する方法を与え、数値実験により十分な近似が行えることを確認できた。今回の方法は区分的線形な関数を介して近似しているが、今後は過渡応答データを用いて直接にRBF関数で表された制御器を設計する問題を検討する。今回の成果はその準備のための研究である。 2)ボリュームデータを用いた反証領域の3Dパラメータ空間表示 PID制御器は3つのパラメータであるので、非反証条件を満たす集合を3D空間に表示することで、解集合の大域的な特長がつかめ、設計も行える。近年、計算機の並列計算やMRI画像の3D表示が容易に実行できる環境となり、新しい試みとしてパラメータ空間内に格子点を与え、各格子点でL2ゲインを計算することでボリュームデータを作成し、3D表示する方法を与えた。フィルタバンクを用いる方法とExtension定理を用いる方法を適用し、前者は計算量の点で十分に実用になることを数値実験で示した。今後、多くの問題をこの枠組みで扱うことができることを確認した。
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