近視眼及び巨視的消散性を(1)合成する安定基礎論、(2)融和する設計基礎論、の構築を目標に置いて、研究推進のために三つの取り組みを予定通り行った。初年度である平成22年度は、(1)と(2)を区別せずに共通の土台のとなる部品を一つずつ考案した。その結果、非線形ダイナミクスの解析をミクロからマクロへ組み立てていく方向と、マクロからミクロへ追究する二方向について理論的な第一段階の十分な成果を得た。時間遅れの組み立て・分解への影響、非対称性についても研究をすすめ、来年度以降につながる方向性を予定以上に得ることに成功した。(1)と(2)の効率的発展のために実モデルから学ぶ工夫として計画した八生命システムダイナミクスを考察した結果、通信ネットワーク、グリッドコンピューティング、スマートグリッド関連技術にも共通に現れる仕組みを見出し、そこに近視眼及び巨視的消散性の合成を持ち込む一つの形式にたどりついた。もう一つの工夫であるC.海外研究者による協力として、非線形ダイナミクスの制御設計法と生命モデル安定論において世界的活躍中のDr.F.Mazenc(仏)とDr.B.Ruefferを招聘した。前者とはダイナミクスを左右する中立型むだ時間ついて集中討論を行い、中立型むだ時間の消散性への組み込み方法と、ミクロからマクロへの合成の基本枠組みを見出した。後者とはダイナミクスのネットワーク構造と計算法について集中討論し新着想を得た。その成果速報として国際学会で発表する3論文を執筆中である。三つ目の工夫B.小型車輪型移動体実験については、予算不足から大幅縮小した計画に従って、研究テーマの基本アイディアの簡単な実演を目指し、学生の協力を得て超低価格の小型車輪型ロボットを2台制御する環境を整えた。初期段階の成果を国内と国際会議で発表し、国際学術誌へ投稿した。
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