研究課題
近視眼及び巨視的消散性を(1)合成する安定基礎論、(2)融和する設計基礎論、の構築のための研究を、年度初めの計画通り進めた。(1)と(2)の共通の土台として昨年度に得た基礎成果を発展させ、(1)と(2)に区別化した。(1)では、大規模ダイナミカルネットワークの位相構造を限定せず、位相構造(空間相互の質)および非線形構造(各空間上の質)とそれらの強度(量)を融合し、ネットワークの安定性(ロバスト性を含む広義な意味)の的確な評価を可能にする数理的枠組を整備することに世界で初めて成功した。誰も解決を予想していなかった成果であり、世界の第一人者達に注目された。本課題において確信を持って本研究代表者が独自に提案した着想をブレークスルーへ導いた鍵は、非線形変換を通した和型リアプノフ構成法の確立である。開発した新数理手法は、大規模非線形ダイナミクス安定論の今後の発展に広く貢献していくであろう。ネットワーク位相構造に時間的広がりを埋め込むことにも成功したことは、本課題計画を超える成果である。(2)についても、(1)の基盤の上に新しい設計論を展開すれば、複数の大きな未解決設計問題を統一的に解決できることが具体的に見えてきた。手始めとして、伝達や内部に時間遅れのある結合システムを、アクチュエータの特性変化や制限に対して強くするロバスト化コントローラの設計法を整備した。このロバスト化は世界で初めてであり、さらには、人工と自然システムの両方でよく活用される不連続性をもつダイナミクスをも包含させる枠組みを明らかにしたことは、(2)の計画を超える進展となった。これらはすべて、(A)生命等の大規模複雑なバランスダイナミクスを参考にした基礎論の的確な方向付け、(C)海外研究者による協力、という二つの工夫を本年度も十分に活かして活動した結果である。以上の成果の主要な国際・国内会議・研究会での発表、および昨年度の成果の雑誌発表活動も行った。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)(1)近視眼及び巨視的消散性を合成する安定基礎論と(2)融和する設計基礎論の両方において、年度始めの計画を超える成果を得た(9,13参照)。これは、遂行上の工夫の(C)海外研究者による協力によって得た新着想を具体的に活用することに成功した結果である。実際のダイナミクスを参考にして的確に基礎論研究を方向付けていく工夫(A)については、当初は生命システムを主に想定していたが、スマートグリッドにも同等のバランスダイナミクスを見出すことができたことは大きな成果であり、本課題の主プロダクトである基礎論(1)(2)開発の成功に大いに役立った。
本課題の主プロダクトである基礎論(1)(2)の開発を効率的に進めるために、課題申請時には(A)(B)(C)の三つの工夫をあげた。その内、(B)小型車輪型移動体を用いた実験については、課題採択時にそれに必要な予算額以上が削られたたため、初年度および今年度の当初計画の通り、(A)と(C)の二つを動力軸として、主プロダクトである(1)(2)の達成を目指し、現在までに予想を超える成果を得ている。最終年度も(A)と(C)の二つを効果的に連係させて基礎論(1)(2)を最終段階まで仕上げる。並行して他のわずかな予算を使い簡易な小型車両ロボットの無線化まで進めており、今後も他予算で可能な範囲で、本科研費成果の基本アイディアを紹介する簡易な実験環境を整備したいと考える(本科研費課題の直接的な成果でない)。
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Automatica
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