研究概要 |
出力の微分値を因果的に推定する機構には,信号を発生するダイナミカルモデルにオブザーバ,カルマンフィルタを適用したモデルベースの推定器と数値微分器のような信号のダイナミカルモデルに基づかない非モデルベースの推定器がある.我々は最近,時変パラメータを推定する適応パラメータ更新則を用いた非モデルベースの適応微分推定器を提案したが,ノイズ抑制と階段関数の微分の際に現れるデルタ関数検出とには,適応ゲインの調整によるトレードオフの関係があった.本研究では,理論解析として,ハイゲイン入力推定器をパラメータ調整則に用いた加速度推定器の証明の改良を行い.ついで,提案手法の微分推定性能を,Levantの厳密微分器と数値的に比較し,性能評価を行った.また,実験的検証として,速度,加速度の実証実験として,カルマンフィルタによる補正機能を装備したCrossbow社製GPS補正付姿勢方位基準装置を用いて,振動計測データから本手法による推定値とCrossbow社製装置との性能比較実験を行った.測定したロール,ピッチ,ヨー角角度,および角速度データを用いて,速度推定器の推定性能を,近似微分器,厳密微分器と比較した.また,角度データから加速度推定器を用いて推定したデータと角速度データから速度推定器を用いて推定したデータを比較し,加速度推定器の性能を検証した.その結果,提案した速度・加速度推定器の推定性能は,ノイズ抑制の点で優れていることを実験データから確認できた.また,数値シミュレーションによる検証として,バイオロジカルニューラルネットワーク全体の背景活動と発火のメカニズムを微分推定器の立場から数値シミュレーションを行った.
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今後の研究の推進方策 |
急変する加速度信号への追従性能に欠点があるため,加速度推定器の推定アルゴリズムの時変パラメータ補正項を追加するとともに,姿勢方位基準装置により取得できないロール,ピッチ,ヨー角角加速度を,軸加速度から推定するアルゴリズムを導出し,加速度推定器の推定性能の検証制度を向上させることを考えている.
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