本年度は最終年度であり、まず、昨年度までの知見と提案を基礎としてこれまでの研究の整理と補填に取り組んだ。生化学分野において周期的アトラクターを生成する典型的な相互抑制型3次分子モデルを基本として、三種類のフィードバック構造を対象として、周期的アトラクターを生成するパラメータの集合を事前に計算し、ランダムにパラメータを発生させランダムにモデルを作成することによって構造の抽出をおこないフィードバック構造の比較をおこなった。アトラクターの確率分布から導かれる評価式に基づき、アトラクターの振幅や周期のゆらぎを確率モデルを用いて評価をおこない、ロバスト性を実現している制御メカニズムをパラメータの分布から定量的に明らかにした。その結果として、アトラクターの振幅と周期の両者ともに、ポジティブフィードバック構造に比較して、ネガティブフィードバック構造の方がゆらぎに対するロバスト性が高いことを示すことできた。この研究については途中経過は学会発表を行ったが、最終的な成果発表を計画中である。本年度は上記の問題の検討に加えて、温度補償性を持った生物の環境温度への同調の問題を検討した。本研究者は過去に温度補償性のモデル構築についても研究経歴をもっており、2011年度の後半にこの温度補償性を持ったモデルを用いたシミュレーションによって興味深い同調の現象を再現できることに気がついた。この問題はゆらぎに対する周期アトラクターのロバスト性とは正反対の性質であり、周期的アトラクターの生物制御理論を構築するにあたって極めて重要な結果を示唆している。ゆらぎとの関係を解明するのは至らなかったが、温度補償性と同調性という相反する物学的現象を再現できるモデルの特徴を明らかにすることができた。この成果については、ASCC2013において発表予定である。
|