研究概要 |
連続時間伝達関数の相対次数が2の重要な制御対象例としてDCモータのモデルは安定限界(-1)に近いサンプル零点を持つことが多いことから極零消去を行いにくいが、フィードバック系の補償器として用いられる位相進み/遅れ要素を直列結合して,その自由パラメータを調整することでサンプル零点の再配置を行いディジタルフィードフォワード制御系を設計することを試みた。その有効性を実証するため、DCモータ角度制御実験装置を製作し,フィードフォワード制御の一種であるモデルフォロイング制御を適用し、規範モデルへの追従制御実験を行った。零点の再配置を行うための位相進み/遅れ要素としてオペアンプ回路を製作して用いた。その結果、良好な追従制御性能が得られることが分かった。比較のため安定限界(-1)に近い零点を再配置せずにモデルフォロイング制御を適用した場合の追従制御実験も行ったが、この場合はモータパワーアンプへの入力信号に持続的振動が発生しやすく、とくに外乱トルクが加わった場合に極めて不安定な挙動がみられた。その一方、零点の再配置を行った場合はそのような現象は全く観察されず、安定性が保たれていた。このことから、提案したサンプル零点の再配置法はDCモータのフィードフォワード制御に有効であることが実証された。また、オペアンプによるアナログ回路は実装面で不便であることから、これを高速サンプル周期のディジタルフィルタに置き換えることを実験的に検証した。実際にモータ角度検出のサンプル周期10msに対して、置き換えディジタルフィルタのサンプル周期を1msにして実験を行った結果、アナログ回路とほぼ同様の良好な制御性能が確認された。理論的研究成果としては、サンプル零点のサンプル周期についてのテイラー展開式の一般的性質をこれまで知られていた以上に明らかすることができたことを挙げられる。
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