研究概要 |
本研究では現代の適応学習制御システムに対する要請を考慮して,広範囲の環境変動や特性変動,制御仕様の変更に対応でき,特に大規模で複雑な対象について,部分的な情報を用いて,全体を統合化しつつ調和の取れた行動を実現するハイブリッド型適学習システムの構築を目的とする.ここでの対象としては,類似または異なるシステム構造を有する多数の動的システムが相互干渉しながら共存する状況を考えていて,各々の対象について部分的な情報に基づくフィードバック制御を行うことにより,全体として調和の取れた行動を実現するような制御の基本原理の開発が研究目的となる.またハイブリッド型適応学習システムとは,制御の要素として,連続時間と離散時間の制御動作の混在,連続事象と離散事象の混在,制御対象のモデルの有限次元の動特性と無限次元の動特性の混在,自由運動と拘束条件下の運動の混在,調和行動に対応する緩やかな拘束とホロノミック拘束と非ホロノミック拘束の混在,軌道の制御と拘束力の制御の混在,条件の切り替わりによるシステムの動特性の切り替わりなどを総合的に含むことを意味していて,これまでの適応学習制御の研究では対処不可能な範疇に属する.これにより適応学習制御,制御理論,知的制御の従来の枠を拡張するだけでなく,大規模複雑系の調和行動の実現という観点から,既存の分野を越えた新たな研究分野の創成とその理論体系の整備も視野に含めている. 本年度は特に簡単な力学系を構成要素として含む大規模系に対して,緩やかな制約条件と関連づけたポテンシャル関数を追加したリアプノフ関数を用いて,特定の物体に対して自立的に群生行動(フォーメーション制御やコンセンサス制御など)を実現する非線形適応H無限大制御方式の構築を行った.その際に,システムパラメータや適応機構の不確定性,群生行動に関わるポテンシャル関数の不確定要因を,非線形H無限大制御問題の外乱として定式化し,適応制御と非線形制御の理論解析により安定性を確保しつつ,制御システム全体の性能を厳密に指定できる設計論を開発した.また個々の要素としての分布定数系,混合定数系,むだ時間系と非線形系の制御問題についても研究を進め,ロバスト制御器の構築などに関して一定の成果を得た.
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