研究概要 |
コンクリート構造物の劣化要因の中でも特に鉄筋腐食は,劣化の速度が大きく,劣化が性能低下に与える影響も大きい。また,昨今の公共事業縮小の動きのもとで,限られた財源の中でできるだけ劣化の初期段階で,かつ,多くの構造物を正しく診断する為に,非破壊で,かつ定量的に劣化診断を行うことのできる手法の開発が求められている。 そこで,電磁誘導加熱(以下IH)と赤外線サーモグラフィを併用して鉄筋腐食を非破壊で調査する方法を利用した。この方法は,腐食生成物は健全な鉄筋に比べ,2桁ほど,更にコンクリートと比較しても1桁熱伝導率が小さく,腐食した鉄筋にIHにより発生した熱がコンクリート中へ拡散しにくい性質を利用している。IHを使うことでかぶりコンクリート下の鋼材のみを熱し,コンクリート表面の温度分布をサーモグラフィによって計測し,温度の違いによって鉄筋の腐食を検知する非破壊診断技術である。 本研究では,この手法の確立を目指し,基礎的検討を行った。具体的には鉄筋腐食量と鉄筋径が温度性状に及ぼす影響の評価を行った。得られた結果を以下に示す。 (1) IHで鉄筋加熱する際に,鉄筋径が大きくなるほど温度上昇量も大きくなる (2) 加熱直後のコンクリート表面の温度は腐食量が大きいものほど低く,小さいものは高い。 (3) かぶり1cmの鉄筋コンクリートの場合,腐食量が5%程度あれば加熱終了後,経過時間による温度減少が起こらず,逆に若干の上昇が見られる。 (4) かぶり1cmの場合,腐食量が5%を超えるとそれ以上はコンクリート表面の温度性状がそれほど変わらない。 (5) 腐食量5%を超える際に発生する大きなひび割れについては,熱の伝播を阻害する。
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