研究概要 |
本研究では,IHで鉄筋を加熱し,サーモグラフィでコンクリートの表面温度を計測する手法を用いて,鉄筋腐食量を非破壊で定量的に把握する手法の確立を目指し,基礎的検討を行った。具体的には鉄筋腐食率と鉄筋径が温度性状に及ぼす影響の評価を行った。 直径125mmの円柱供試体で,かぶり10mmの位置に外径100mmのφ10またはφ13円形丸鋼を配置した。コンクリートの配合強度は35N/mm^2とし,鉄筋の目標腐食率は0,2,5,10%とし,実験を行った。腐食には電食を用いた。加熱開始時から熱電対によって鉄筋の温度を5秒間隔で測定した。加熱終了後はコンクリート表面をサーモグラフィカメラで撮影した。供試体からカメラまで50cmで撮影し,撮影時間は加熱終了30秒後から390秒間で撮影間隔は30秒間隔とした。 得られた結果を以下に示す。 (1)IHで鉄筋加熱する際に,鉄筋径が大きくなるほど温度上昇量も大きくなる (2)加熱直後のコンクリート表面の温度は腐食率が大きいものほど低く,小さいものは高い。 (3)かぶり1cmの鉄筋コンクリートの場合,腐食率が5%程度あれば加熱終了後,経過時間による温度減少が起こらず,逆に若干の上昇が見られる。 (4)かぶり1cmの場合,腐食率が5%を超えるとそれ以上はコンクリート表面の温度性状がそれほど変わらない。 (5)腐食率5%を超える際に発生するひび割れ幅0.6mm程度の大きなひび割れについては,熱の伝播を阻害する。
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今後の研究の推進方策 |
本年は供試体の作製時に,より多くの熱電対を設置し,基礎的データを多くとることにより,試験データの精度向上をはかる.また,昨年,試行錯誤的に試験装置の改良を図り,試験装置から発生する熱が供試体に与える影響を減少させることができた.これらにより,実施予定の熱拡散解析が容易になるものと考える.
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