研究概要 |
2011年度は,UFC(アラミド繊維混入型超高強度繊維補強コンクリート)を対象として,爆裂抑制繊維(PP,Jute,WSPVA)を添加した際の爆裂抑制効果を確認した。すなわち,加熱温度400,600,800℃の電気炉内にΦ50×100mmの円柱供試体を静置し,損傷状況を確認した。 その結果,本研究の範囲内で以下の結論が得られた。 1)加熱試験において各供試体とも加熱温度が400,600,800℃と高くなると損傷率が高くなる傾向にある。しかし,爆裂抑制繊維を混入すると800℃加熱でも損傷率が30%程度に抑制できることがわかった。 2)PP繊維は一般的の爆裂抑制用として用いられているが,今回の結果では損傷率が大きい場合があった。PP繊維の融点は170℃前後であるが,今回の加熱試験は急激な温度勾配を供試体に与えたためPP繊維が溶融する前に爆裂が生じた可能性が考えられる。 3)WSPVA繊維が50-90℃の水溶液中で溶解することから急激な温度勾配が供試体内部に生じた場合でも,繊維が水分存在下で一部が溶解するか,繊維とセメントマトリックスとの付着力が緩和されたため蒸気圧逸散ネットワークが形成され爆裂を低減できたと考えられる。また,今回使用した繊維長が4mmであることを勘案すると,繊維長を更に長く すると爆裂抑制効果が高まることが期待できると考えられるが,今後更に検討したい。 4)Jute繊維について,繊維長3mmよりも12mmが爆裂抑制効果の高いことが分かる。Jute繊維は,複数の管(中空構造)が束になっていることから,蒸気圧逸散ネットワークを形成し爆裂を抑制できることが考えられるが繊維長3mmでは蒸気圧逸散ネットワークの形成が十分ではなく爆裂抑制効果が小さくなったと考えられる。 5)本研究の範囲内において,繊維の種類と長さによって爆裂抑制効果に差異が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は,ハイブリッド耐火型コンクリートの加後の力学性能を検証する予定である。すなわち,加熱なし,100,200,300,400,500℃で加熱した供試体の圧縮強度,曲げ強度,弾性係数の低下状況を確認し,設計時に必要な力学性能を確認する。
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