研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,C-S-Hの炭酸化実験を行った。C-S-Hについては,試薬を用いた合成物を用い,合成C-S-HのCa/Si比は0.7,1.1,1.4とした。Ca/Si比0.7および1.4は,合成後に不純物が残存しない,下限および上限のCa/Si比である。炭酸化の方法としては,試薬(NaOH)により作製した模擬細孔溶液(初期pHは13.2)80mlに粉末状のC-S-H1.0gを加えたものを試料とし,これを炭酸化試験槽内に曝露した。CO2ガス濃度は0.05,0.5,5.0vol.%とし,雰囲気の温度は25℃,相対湿度は水の蒸発を防ぐ目的で約99%とした。所定の曝露期間が経過した後,吸引ろ過を行い試料を溶液と残渣とに分離した。溶液についてはpHメーターによりpHを,フレーム原子吸光光度計により溶液中のCa濃度とSi濃度を測定した。残渣についてはTG-DTAにより炭酸カルシウム量を定量し,また,サリチル酸メタノールへの溶分をC-S-H量とみなし,処理前後の質量差を測定することでこれを求めた。 全体的な傾向として,Siの大部分は固相にシリカゲルとして存在している可能性が高い。また,サリチル酸メタノールに溶解しない,低Ca型のC-S-Hが炭酸化により生成しており,低Ca型のC-S-H,および高Ca型のC-S-Hはともに環境のCO2ガス濃度が低いほど多く残存していた。 Ca/Si比が高いC-S-Hほど,炭酸化速度が速いことを実験的に確認した。ただし,この詳細な機構に関しては不明な点も多く,Ca/Si比の異なるC-S-Hの炭酸化モデル構築に向けて,さらに実験的および数値解析的な検討を続けていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
モデル化を行うにあたって,反応系全体に関する詳細な経時変化データが必要である。具体的には,炭酸化後の残渣中のシリカゲル量の定量が必要と考えられる。今後は,新たにシリカゲル量を測定し,Siの変化を見極めたうえで,C-S-Hの炭酸化モデル構築を行っていきたいと考える。
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