鉄筋コンクリートは多くの社会基盤に活用されている。しかしながら近年、鋼材腐食を伴う劣化が進行している既設構造物が、急速に増加している。これは、高度経済成長期に建設された鉄筋コンクリートが、塩害・中性化により老朽化を迎えつつあるからである。したがって、市民が安心・安全・快適に社会基盤を利用し続けるためには、性能が不満足な構造物を見つけ出し、合理的な対策を施さなければならない。 以上の背景を踏まえて本研究では、塩分浸透や中性化進行によって鋼材腐食を有するコンクリート構造物に対して、点検・対策の優先順位を決定し、必要に応じて合理的な対策を施す“維持管理システム”を構築する。 そのため平成24年度には、低コストで安全・安心・快適を保証する維持管理シナリオの考案について研究した。すなわち、関連する既往の研究業績なども参考にしながら、平成22~23年度の本科研の成果を総じて、鉄筋の腐食抑制を終局とする維持管理計画を策定する考え方を提案した。 高度経済成長期から50年が経ち、当時に建設された多数のコンクリート構造物に対して、合理的な維持管理が求められている。この社会的背景を受け本研究では、作用強度および劣化速度評価に基づく優先度、優先度評価に必要な点検・調査技術、優先度決定システムについて検討を行い、さらに効果的な補修方法を提案した。今後に、「事後維持管理」から「予防維持管理」への移行する際の貴重な工学的知見が、研究実績として得られた。
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