研究概要 |
鋼とコンクリート合成構造の健全度評価法を構築することを目的として,供試体実験による基礎的データを収集した.鋼とコンクリート合成構造の接合部を模擬した供試体を作製し,段階的に鋼材腐食を促進させ,さらに,鋼材腐食レベルに応じて振動試験を行うことによって,鋼材腐食量と振動特性との関係を整理した.本研究によって得られた成果を以下に列挙する. (1)小型起振機を用いた周波数スイープ試験の方法を提示した.この試験方法によって,従来の振動試験では難しかった減衰定数の測定精度を大きく向上させることができた. (2)鋼コンクリート接合部供試体について,鋼材腐食量と減衰定数の関係を整理した.鋼材腐食率が2~3%程度を超えると減衰定数が10~40%程度増加する傾向が見られた.また,この鋼材腐食レベルでは接合部供試体の剛性,耐荷力および変形性能の顕著な低下は見られなかった, (3)上記(1)の振動試験を大型化し,橋梁構造部材に応用した.スパン10~30m程度の道路橋,実地盤中に埋め込んだ杭供試体,供用中の高速道路の床版など,様々な橋梁構造部材の現場試験が可能であり,経年劣化や地震によるひび割れなど,部材の劣化や損傷の程度を評価できる可能性を示した. (4)反共振周波数を指標とした単純ばり構造の損傷位置の同定手法を提示した.基礎的検討として,1箇所に亀裂を導入したコンクリートはり供試体の振動試験を行い,損傷位置が同定できることを解析と実験によって確認した.さらに,上記(3)の検討によって,道路橋の振動試験でも反共振周波数が実測できることを確認した.
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