研究概要 |
本研究では,スタッドの押抜き標準試験よりも拘束度の高い押抜き試験に基づく孔あき鋼板ジベルのせん断力-ずれ変位関係やせん断耐力を明らかにするための実験を行った.前年度は,貫通鉄筋がない場合について,押抜き試験のコンクリートブロックの寸法,コンクリート強度,ジベル孔径をパラメータとした実験を行ったが,本年度は,それに引き続く実験を行い,耐力評価式作成のためのデータ数を増やし,ジベル孔径やコンクリートの圧縮強度に加えて,コンクリートブロックの寸法を考慮した新しいせん断耐力評価式を作成した.そして,その結果をまとめて土木学会の年次講演会で発表するとともに,査読付き論文および国際会議論文に投稿中である. さらに本年度は,孔あき鋼板ジベルの貫通鉄筋の効果を確かめるために,ジベル孔径と貫通鉄筋の径が相対的に異なる押抜き試験体による実験を行った.具体的には,貫通鉄筋径を10mm,ジベル孔径を30mm,60mm,90mmとして一連の実験を行い,せん断力-ずれ変位関係やせん断耐力を明らかにするとともに,特に,貫通鉄筋の挙動を詳細に調べた.貫通鉄筋径とジベル孔径の相対的差が小さい場合には,貫通鉄筋の中央部のひずみが局所的に大きく,貫通鉄筋が折れ曲がり破断するようなモードを示した.これに対して,貫通鉄筋径とジベル孔径の相対的差が大きい場合には,貫通鉄筋の中央部のひずみはあまり大きくならずに,弾塑性曲げにより耐力に至るという興味深い知見を得た.また,貫通鉄筋径とジベル孔径の相対的な差により,ジベル孔内のコンクリート部分のせん断耐力も同じではないことがわかった.今後はこれらの結果をまとめて,貫通鉄筋がある場合のせん断耐力評価式の作成を行う予定である.
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