研究概要 |
常時微動の3成分展開アレイ観測情報から算出される,多様な空間自己相関係数および一般化スペクトル密度比をターゲットとする新しいS波速度構造同定法を導出・検証する.本手法では,従来のRayeigh波位相速度をターゲットとする推定法に比較して,地下構造を反映した微動観測情報が余すところ無く活用され,表層から地下深部に至るS波速度構造を精度良く推定することが可能となる. 平成22年度には下記の研究を実施した. 1)常時微動のアレイ観測から算出される3成分空間自己相関係数から,S波速度構造を直接推定する方法を定式化し,モデル地盤および実観測データに適用し妥当性を検証した. 2)福井平野周辺で3成分アレイ観測を実施し,上記の手法を適用し,通常のRayeigh波位相速度からS波速度を算出する方法との比較を行い.実際問題への適用性を検討した. 3)福井平野の約80か所で常時微動のアレイ観測を行い,上記のS波速度構造推定法を適用し,地点ごとの構造を同定するとともに,その空間補間により福井平野の3次元S波速度構造モデルを求めた.福井県の地盤構造は不明な部分が多く地震被害予測の障害となっていたが,微動アレイ観測から地盤構造が明らかになったことで,その信頼性と精度を改善できる可能性がある. 4)長による一般化スペクトル密度比をターゲットとして,S波速度構造モデルを算出する方法を定式化し,モデル地盤に適用し,その妥当性を検証するとともに,アレイ半径ごとの有効な周波数範囲などの検討を行った.
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