研究概要 |
平成23年度は九州地方および山口県におけるダムコンクリートに対象を絞り,現場調査を数多く行った。いずれも「(1)概観調査」,「(2)リバウンドハンマーによるコンクリート表面の反発硬度調査」,「(3)管理者に許可を得た上でのコンクリート片の採取」を基本とした。それらの情報収集の結果から,山口県内のSダムの監査廊における劣化に対象を絞ることが有効であることを結論づけた。その理由としては,従来の劣化メカニズムでは説明が困難な激しい劣化が生じていること,劣化状態が英国(日本では正式な発見報告事例はない。)で問題となっているソーマサイトを含んでいる可能性があることが挙げられる。予備調査により水質検査を行ったが,予想の酸性ではなくアルカリ性であった。その点については更なる調査が必要である。特に,瞬間的に酸性の値が出たケースもあり,精査が必要である。調査対象の水分は元々がダム湖中の養分腐食による酸性水と考えられたが,これがコンクリートへの浸入中にアルカリ性の影響を受けたと今年度は結論づけた。また,本研究で想定しているソーマサイトの生成を含む劣化事例は海外での報告しか存在しないため,国際会議においても最新の情報収集を行った。それらの知見に基づき,実験室においてコンクリートを多く作製し,コンタクトゲージ法による局部的な収縮量の分布を長期的に測定して劣化メカニズムと結びつけることを試みた。残念ながら,明確な劣化メカニズムまでの解明には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンクリート構造物はそれぞれ管理者が決まっており,異なったルールに従って管理されている。コンクリートの調査や破片採取においては当然ながら許可が必要となり,手続きに予想よりも長時間かかってしまった。さらに,現場に近づいてみると予想と劣化状態が乖離しているケース(実際は従来の劣化と同様であったこと)も多く,研究成果に直結するケースが極めて少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
対象構造物を絞っているので,分析を中心に研究を実施する。ただし,研究代表者の所属先が変更になり,研究実施体制が大きく変わったことから,新たに成分の分析機関を探す必要がある。
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