研究概要 |
複数物体の背後において,上流側物体のウェイクに位置する円形断面の構造物や部材に生じる振動現象は,斜張橋の並列ケーブルのウェイクギャロッピングや送電線におけるウェイクインデュースドフラッター等がよく知られている.そして,これらの現象は,上流側物体の後流と下流側物体の相互干渉作用による自励振動である.本年度は,その振動発生のメカニズム並びに振動応答特性に及ぼす表面粗度の影響等について検討し,得られた成果を以下に示す. ・円柱の表面に設置した粗度を定量的に評価するために、平板上に粗度を敷き詰めて、その表面粗度上に発達する境界層特性から、粗度長を求めた. ・円柱表面に粗度を付与した場合には,後流側円柱に生じるウェイクギャロッピングの振動が低風速で生じるとともに応答振幅が増大することもあるが,逆に、高風速においては、大振幅の応答が発現せず、応答振幅が円柱の半径と同程度に留まることも明らかとなった. ・ヘリカルワイヤーの傾きを大きくすると気流の2次元性が低下し、20度以上の傾斜を与えると不安定振動が抑制されることが確認できた. ・本研究で対象としている2円柱間の中心間隔が直径の3倍で比較的質量や減衰が小さい場合には,2段階の応答振幅(小振幅は半径程度であり,大振幅は直径と同程度から1.5倍程度まで風速の増加とともに増大する)が,発生ずることが昨年度の研究から明らかとなっている.これは,円柱周りの流れの可視化実験から,小振幅の振動現象は上流側円柱背後に形成される止水領域に後流側円柱が位置し,振動時に上流側円柱の剥離流が下流側円柱の上流側剥離流の発生している側面と逆方向の側面に流れ込む従来から指摘されている流れのスイッチング現象に起因していることが確認できた.一方,大振幅現象は上流側円柱背後にカルマン渦が生じており,平均的な上流側円柱の剥離境界層に応答振幅が密接に関連していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究実施項目として,構造物背後に設置された円柱に生じる空力振動特性を各種風洞実験によって調査・検討し,さらには,この空力不安定振動現象の風力発電への適用性についても検討するとともに実構造物を利用した風力発電のための風況調査を挙げており,おおむね計画通りに実験・観測等を順調に進展することができているため.
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