複数物体の背後において,上流側物体のウェイクに位置する円形断面の構造物や部材に生じる振動現象は,斜張橋の並列ケーブルのウェイクギャロッピングや送電線におけるウェイクインデュースドフラッター等がよく知られている.そして,これらの現象は,上流側物体の後流と下流側物体の相互干渉作用による自励振動である.本年度は,その振動発生のメカニズム並びに風力発電装置としての可能性等について検討し,得られた成果を以下に示す. ・本研究で対象としている比較的質量や減衰が小さい2本の円柱状物体の中心間隔が直径の3倍に配置された場合には,2段階の応答振幅(小振幅は半径程度であり,大振幅は直径と同程度から1.5倍程度まで風速の増加とともに増大する)が,発生することが本研究によって明らかとなっている.さらに,円柱表面に粗度を付与した場合には,大振幅の応答が低風速で生じることも明らかとなった。この低風速における大振幅応答のウェイクギャロッピングも表面粗度を付与していない円柱の高風速におけるウェイクギャロッピングの振動と同様なメカニズムで発生していることが流れの可視化から明らかとなった。 ・5階建て建物の屋上のパラペットや手摺の背後に上下振動が可能なように支持された1本の円柱の自然風中におけるウェイクギャロッピングの応答特性について設置位置等を変化させて調査を行ったが、観測期間中においては、明確なウェイクギャロッピングの発生について確認できなかった。
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