本研究では、鋼橋の腐食部位の中で腐食劣化速度が著しく速く、腐食劣化状況によっては橋の安全性が損なわれる危険性の高い摩擦接合型高力ボルト継手部を対象とし、腐食高力ボルト継手の残存耐荷力性能と疲労耐久性の評価を目的とする。研究実施に際しては、橋梁管理者から提供された腐食高力ボルト継手部を用いて、高力ボルトの腐食減厚量と軸力との関係、腐食高力ボルト継手の残存耐荷力性能、および疲労強度特性について、実験を主体に解明する。本年度は、「実腐食高力ボルトの残存軸力の推定」に関する研究を行った。以下に本年度の主な研究実績の概要を示す。 1、腐食高力ボルトの腐食減厚量計測 代表的な腐食高力ボルトを用いて、腐食劣化が最も激しいボルトナット部を主計測部位として、外観目視による腐食劣化度の分類、ノギスとマイクロメーターを用いた腐食減厚量の計測、レーザー変位計を用いたナット外径の腐食形状計測を行い、腐食ボルトの腐食劣化度の分類に関する研究を実施した。次年度も継続して計測を行い、腐食劣化度の分類を行う。 2、腐食高力ボルトの残存軸力推定法に関する実験研究 高力ボルトの残存軸力の計測として、ボルトヘッド表面のひずみからボルト軸力を推定するひずみ法を適用した。実験では軸力を正確に計測できる軸力計との比較によって、ひずみ法の精度と適用性を検討した。その結果、新材ボルトを用いた場合には、その適用性に一定の成果が得られた。次年度は腐食ボルトでの適用性について実験を行う。 また、高力ボルト継手試験体を作製し、引張試験を行い、得られるすべり耐力から軸力を推定した。次年度も実験を継続し、腐食減厚量と高力ボルト軸力低下との相関分析、実腐食高力ボルトの残存軸力推定、および実腐食高力ボルト継手の残存耐力性状を解明する。
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