平成24年度は、正方形断面の代表である水道施設等に設置されている受水槽を対象として制振装置を検討する。水道施設等の受水槽は一般に病院などの公共施設の他,集合住宅などにも多く設置され、災害時はライフラインとして重要な役割を担っており、これらに被害が生じると給水できなくなるなど生活に大きな影響を及ぼす。ところで対策として制振装置を受水槽に適用する場合、上水を扱う場合が多いため、衛生性から適用できる材料が限定されること、さらに既設の水槽内への設置では、狭空間での現地施工の課題がある。本研究では衛生性に優れた樹脂配管を利用し、さらに狭空間の現地施工にも対応した制振装置モデルを検討し矩形水槽を用いてその効果を検証した。 (1) 水面からの差込長を変化させた時の最大波高は、差込長が大きくなるにつれて非制振時と比較して波高低減効果が高くなり、対数近似的な傾向を示している。制振装置の差込長(設置枚数)に対する制振効果は必ずしも差込長に依存しない。これは水槽の液面付近程流速が速く,底面に近づく程流速が遅くなることに起因するものである。 (2) 樹脂配管の取付けピッチから閉塞率と最大波高の関係より制振装置を設置することで28%の閉塞率で最大波高を半減できた。さらに閉塞率を上げるとその効果は高まり、84%閉塞させると非制振時の約20%まで波高を抑制できることが確認できた。これらの傾向は、閉塞率を上げることで2次曲線的に最大波高を低減させるものと推測される。 (3) 閉塞率を上げるには樹脂配管を相当数設置する必要があり、施工コストを増大させることから受水槽に適切な波高低減量を設定することが重要である。 (4) 非制振時は起振中波高が増大し続けるのに対し、制振装置を設置した場合、起振途中から波高成長が抑制されている。 (5) 起振終了後の減衰定数が制振装置を設置することで非制振時に比べて2倍以上となった。
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