平成22年度は近代木橋の経年による構造性能の実態把握に基づく残存強度評価法を開発するために、近代木橋の補修工事・点検データの要因分析、および健全度調査、動的実験や構造解析を行ない、経年による劣化個所の特定、構造性能の変化や強度低下を検討した。 1. 木橋の日常・定期点検や補修工事の実績は少なくないが、多くの木橋では点検や補修工事が行われていない実態が判明した。この原因は、木橋管理者の担当者や予算の削減、使い易い点検マニュアルがない等であった。簡易な点検マニュアルの整備と啓蒙は急務である。 2. 「常盤橋」(3径間連続桁橋:福岡県)と「三日月橋」(アーチ橋:大分県)の2木橋の目視検査や維持管理調査を実施した。その結果、木材の腐朽や劣化しやすい個所の特定分類、および経年による腐朽部の劣化が橋全体め構造剛性に影響を及ぼすことが確認された。 3. 架設後20年が経過している「こおろぎ橋」(方杖橋:石川県)では、健全度調査と動的実験を行った。目視検査、打音試験、超音波伝搬速度試験、含水率測定試験の結果とし、床板・高覧・地覆・方杖・支柱部材で経年による木材の腐朽や劣化が顕著であることが明らかになった。また、動的実験で得られた「こおろぎ橋」の固有振動数と構造解析からの逆推定の手法で把握すると、完成直後から20年経過によって、木材のヤング係数は34~46%低下していることが判明した。この結果は、「錦帯橋」の経年によるヤング係数の低下率とほぼ同様であった。 4. 976木橋データから54近代木橋を抽出し、耐用年数の算出を検討した。耐用年数の算定は、使用材料、周辺環境、構造形式、設計計画、施工管理、維持管理の6項目から求めた。その結果、10年~24年がほとんどであり、30年以上は非常に少ない事が明らかになった。耐用年数の算定法にも問題点があることの知見を得た。23年度は耐用年数の推定法を更に検討する。
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