平成24年度は、経年による近代木橋の構造性能変化の実態把握に基づく残存強度評価法を開発するために、近代木橋の健全度調査、動的実験や構造解析を行ない経年による劣化個所の特定、構造特性値の変化や剛性・強度低下および模型橋による維持管理法の開発などを検討した。 ①平岡公園の梅の香橋(北海道)1回、愛逢橋(佐賀県)2回、常盤橋(福岡県)1回に対する目視検査や健全度および維持管理の調査などを実施した。その結果、木材の腐朽や劣化個所の特定分類、および経年による腐朽部の劣化が橋全体の構造剛性に及ぼす影響が検討された。その成果の一部は、経年による愛逢橋の3次元構造解析のモデル化、および経年による常盤橋の振動使用性の解析法と維持管理のための振動使用性の基準開発に反映することができた。 ②架設後25年が経過しているかじか橋(近代木製上路式アーチ車道橋:石川県)の健全度調査と動的実験を行った。目視検査、打音試験、超音波伝搬速度試験、含水率測定試験、ピロディン試験の結果として、床板・地覆の各部材で経年による木材の腐朽や劣化が部分的に顕著であることが明らかになった。特に、5本あるアーチリブ支障部の劣化損傷が著しい。また、動的実験から固有振動数と減衰定数は経年によって明確に値が小さくなった結果を得た。また、構造解析による逆推定法で検討した場合、完成直後から25年間の経過によって木材のヤング係数は40%程度低下していることが確認された。 ③木製歩道橋の模型橋を製作し、腐朽部における振動波形の特性評価の動的実験を実施した結果、腐朽部での振動波形の乱れが確認された。特に、腐朽部の断面欠損率が50%を超えると応答速度波形に明確な波形の乱れ見られることが確認された。新たな維持管理手法を開発するために、さらに応答波形の挙動特性を検討する必要がある。
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