研究概要 |
部材破断したトラス橋の安全性を評価するため現在の実務現場において用いられている静的線形弾性解析に基づいたリダンダンシー解析が各方面で利用されているが,腐食損傷などによる部材破断にともなうトラス橋の振動により生じる動的増幅効果は,一自由度系から得られる極めて単純な衝撃係数が用いられるのが一般的である。しかし,実際のトラス橋の部材破断時の振動には,複数の振動モードなどが複雑に関与するため,現状用いられている衝撃係数には大いに疑問が残る。本研究では合理的で適切な衝撃係数について数値解析,実験の両面から明らかにし,実用的な衝撃係数の提言を行う。この結果は,橋のライフサイクルコストを含めた合理的な維持管理計画を行う上でたいへん有用となる。さらに,部材破断時のトラス橋の崩壊メカニズムを解明するため,進行性破壊を考慮した構造解析法を提案し,この解析結果を考察することでトラス橋の崩壊を防止する上で重要なポイントを見つけ出す。このような解析結果から得られる知見は今後の維持管理における検査法の具体的改善に役立つ。 平成23年度は、実際の上路式および下路式ワーレントラス橋を対象にリダンダンシー解析において考慮すべき衝撃係数について動的解析を利用して具体的に調査した.また,固有ベクトルを利用した衝撃係数の簡易に算定するための方法についても提案を行い,その精度検証を行った.これらの一連の成果については,ASCE(平成23年8月)に公表(第二著者として)した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のもう一つの目的であるトラス橋の進行性破壊とそのメカニズムの解明については,昨年度から継続して検討を行っているものの,数値解析モデルのモデル化手法の差異や鋼材自体の破壊条件のとり方などにより計算結果が大きく変動するため,知見をまとめることが容易ではないのが現状である. 今年度も引き続き計算を行い,計算ケースを増やして,モデル化の影響や破壊条件の影響と進行性破壊メカニズムの関係性について整理していきたいと考えている.
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