研究概要 |
全国に数多く存在する灌漑用ため池の多くは,江戸時代に人力により経験的な手法で築造されていることから,堤体の均質性(土質材料,締固め程度)に関しては,現在の規準を満足しない場合が多い。ため池堤体改修工事おいては,現況堤体の各種物性値を得るためにボーリング調査や土質調査が実施される。しかし,現況堤体の各種物性値を非破壊な物理探査手法によって推定できると,二次元的な土質物性を詳細に把握することが可能となり,調査経費の大幅な節減につながる。さらには,堤体改修工事完了後の堤体土質物性が非破壊探査により評価できれば,品質管理に利用可能となる。研究代表者はこれまで,表面波探査や常時微動等の非破壊探査を援用して,ため池堤体の物性評価の研究を実施してきた。 本研究では,これら非破壊探査手法を改修工事が実施されるため池堤体で実施し,改良前後のS波速度及び振動特性を比較することによって堤体改良効果の検証方法を開発するものである。 研究期間の初年度にあたる平成22年度においては,以下の検討を実施した。 1,調査対象ため池の既存データの収集と予備的検討 改修が予定されている老朽化ため池の既存データを収集すると共に,堤体の変状程度を調査した。 2,改修工事前における常時微動測定によるゆるみ域の検出 香川県内のため池堤体を対象として,堤体の天端と下流側地盤上で常時微動測定を実施した。測定結果を成分ごとのフーリエスペクトルを求めH/Vスペクトル比を算出し,堤体の振動特性を把握した。 3,改修前の堤体の物性評価 常時微動測定によって得られた振動特性によって,改修前の堤体の物性を評価した。ため池堤体の堤軸方向ならびに深度方向の物性変化についても検討を行った。
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