地盤改良の新技術として、微生物を利用して土中で鉱物を生成させて土を固める技術を開発する。土壌微生物(NO-A10菌)が産生するウレアーゼ(酵素)を利用して、尿素の加水分解により生成する炭酸イオンとカルシウムイオンを反応させ、炭酸塩を生成させることができた。また、マグネシウムイオンを加えることで、異なる結晶が得られ、セメント効果および耐酸性が増すことを検証した。X線回折結果により、カルシウムイオンの場合にはカルサイトまたはアラゴナイトが生成し、マグネシウムイオンを使用した場合には、やや複雑な結晶物であることがわかった。これについてはさらに検討を進める。顕微鏡により炭酸塩の結晶成長を観察し、その速度を推測できた。 微生物の培養を重ねるにつれ、酵素の失活が起こり始めた。その原因を調べた結果、酵素の活性中心に必要なニッケル元素が不足していることが判明した。その対応として培養液に0.1~1ppm程度のニッケルを添加することで、失活が起こらなくなり、活性速度は上がった。 モールドを用いて砂供試体の作製を行った。しかし、モールドでは微生物とイオン溶液を均質に浸透させることが難しく、結果として上下端面の固結に問題が残った。したがって、一軸圧縮試験を行うことができず、セメント効果は針貫入試験によって推測した。それによると、炭酸塩含有量が1%増えると、砂の一軸圧縮強さが0.2~0.4MPa増大した。すなわち、生成させる炭酸塩が地盤改良のために極めて有望な材料になる得ることが判明した。 土中へ溶液材料の浸透に関しては、微生物とイオン溶液の比重の違い、微生物およびイオンの電荷により物理-化学的作用について検討する必要があることが分かった。特に、土粒子と微生物の吸着現象と陽イオンが介在して起こる微生物の凝集などがセメント効果に影響することが観測された。
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