汚染土壌の浄化や建設汚泥の有効利用などの環境地盤工学的諸問題の対策には,細粒土の特性を把握することが前提であり,そのために土質試験が実施されている.しかし,従来の土質試験は個々の工学的目的に対応したものであり,包括的な土の特性を理解するのは問題がある.研究代表者は,氷点下で凍結する(又は凍結しない)土中水の挙動が土粒子に対する間隙水の吸着の強さを表すのではないかとの着想を得ている.本研究の目的は,この着想を基に細粒土の物理的・力学的挙動を間隙水の吸着の強さの指標として統一的に評価する方法を提案することである.具体的には,次の項目を目的とする.(1) 凍結試験から細粒土の透水係数を推定する方法の提案,(2)凍結試験から細粒土の物理特性と力学特性.本年度は,前半で目的(2)を,後半では研究総括を行った.その結果を以下に示す. (1) 飽和細粒土の強度発現は,従来,土粒子近傍の吸着水によって粘着力で代表される細粒土特有の性質を発揮するものと考えられていた.しかし,本研究で得られた結果によると土の強度特性(qu,E50)は間隙水中の吸着水(未凍結間隙比eu1(-1℃)で代表される)ではなく,自由水(凍結間隙比ef1(-1℃)で代表される)によって支配されていることが明らかとなった.(2) 圧密沈下に関して,体積圧縮係数mvや圧縮指数Ccの実験からは,圧密荷重により排水される間隙水は均一に排水されるのではなく,土粒子の遠方の自由水から順番に排水されることが明らかとなった.(3) 圧密時間に関して,圧密係数cvは吸着水が一定量までは,eu1(-1℃) = 0.6以下になるとその低下傾向が落ち着く.このことは,間隙中の自由水が連続して存在することができる限度を越えて吸着水が多量に存在すると圧密速度が水の粘性のみによって支配されている可能性を示す.
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