沿岸域の淡水が、塩淡境界に沿ってせり上がってくる海底地下水湧出の流動経路と量的把握については、海外を含め良くわかっていなかった。このことから、塩淡境界を含む沿岸域の地下水流動において、降雨浸透や海面上昇の影響など沿岸域の不飽和地盤内の地下水挙動を正確に把握するためには、沿岸部の砂材に加え、これまで着目されていない破砕貝殼の保水性についても検討し、水分特性曲線と貝殻の粒径および拘束圧との関係について明らかにした。 本研究では、破砕した貝殻(3種類の粒径区分:4.75~9.5mm、2.0~4.75mmおよび2.0mm未満)を用いて、保水性試験とキャピラリーバリアを構成する砂材の混入に関する簡易試験を実施した結果、以下のことが明らかになった。 1. 飽和した貝殻供試体にマトリックサクションを作用させると粒径区分の大きさに関わらず、急激な体積含水率の低下を生じた。粒径区分4.75~9.5mmと2.0~4.75mmの供試体は、体積含水率はほぼゼロに近づいたが、2.0mm未満の貝殻供試体の場合は、水分が残存し保水性が確認できた。 2. 薄片状の形状が大部分を占める破砕した貝殻の水分特性曲線を砂材・礫材の水分特性曲線と比較すると、礫材の湿潤過程の水分特性曲線に類似している。 3. 粒径区分2.Omm未満の破砕した貝殻は、拘束圧を載荷することまた、拘束圧を高めることにより保水性が高くなる傾向を示した。破砕した貝殻の粒度分布は、拘束圧作用の前後で変化がないことから、保水性の変化は貝殻の粒度分布の変化によるものではなく、拘束圧Pの増加による破砕した貝殻の密度増加が影響したといえる。 4. 上部に砂材、下部に礫材の組合せ土は、振動を与えることで砂材が下部の礫材の間隙に多量に混入する。しかし、下部を破砕した貝殻に置き換えた場合の組合せ土は、砂材は下部の破砕した貝殻層にはほとんど混入しない。 5. 破砕した貝殻の水分特性曲線や振動作用による砂材の破砕した貝殻層への混入の観察結果から、破砕した貝殻はキャピラリーバリアに有効利用できる可能性があるといえる。
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