温暖化(上位)シナリオを基に,想定される地球温暖化に伴う海面上昇は,世界平均で2100 年頃には約49 cmと予測されている.この地球温暖化に伴う海面上昇の影響は,海水面下の地盤に影響を及ぼすだけではなく,海水面より上部に位置する不飽和地盤にも影響を及ぼす.また,沿岸域での淡塩水境界や不圧地下水の動態は,砂浜地形の変化および砂浜域と浅海域のそれぞれの生態系と密接に関係していると考えられる.加えて,不飽和地盤内に保水された水分は,植生を定着させ生態系の形成に貢献している.しかし,地下水に塩分が含まれている場合には,毛管力による塩分上昇により,地表の植栽が枯死することも報告されている.前述のように,不圧地下水の動態と共に,不飽和地盤内の塩ならびに水の動態に関して理解を深めることは,砂浜域の植生を定着させ多様な生態系の形成・再生に資するものと考えられる.しかし,沿岸域での塩と水の同時移動については,まだ解明されていない現象が残されている.特に,不飽和領域における毛管力に伴う塩と水の同時移動に関する現象については,調査研究事例は比較的少ない. 以上より,不飽和砂地盤中の塩と水の同時移動の挙動を明らかにすることを目的に,本研究では塩水を用いて内径10 cm の鉛直一次元円筒装置を用いた土柱法による水分特性曲線を求め,保水性特性を把握した上で不飽和砂地盤内の毛管力に伴う塩と水の浸入・残留および流出挙動について検討した.具体的には,小型降雨装置を備えた内径20 cm の鉛直一次元円筒装置を用いて,潮位変動を考慮した塩水位の変動並びに除塩を想定し上部から散水・浸透流を供試体に与え,体積含水率と電気伝導度の経時変化を測定した.加えて,鉛直一次元円筒装置の下端部から排出される全流出水を連続採水し,塩分含有量の経時変化について測定した上で,塩と水の同時移動の挙動について実験的に明らかにした.
|