都市とその周辺の地下汚染対策、水資源の利用と保全、工事による流動阻害対策、地下水管理などに適用するため、複数地点の井戸水中の化学成分(化学トレーサー)分析値から、都市域の地下水の複数の流動経路を分離し、各経路の分布と流量の割合、移動・滞留時間や流動履歴を高精度で決定する方法を提案する。また、その方法を野外に適用し、妥当性を検証する。 H24年度は、地下水の採取を長野県の佐久市地域の117箇所および松本盆地の54箇所で実施し、水中のCFCs濃度とSF6濃度、および一般水質を測定した。測定した結果、SF6はほとんどの地点で測定でき、年代決定(滞留時間測定)ができた。それに対し、CFCsは人為汚染が原因で過大な濃度が測定され、特に、松本盆地の地下水では、年代決定できない地点がほとんどであった。CFC-113では、過大な濃度の地点は工業団地内あるいは周辺にあった。したがって、SF6を用いて複数の流動経路の滞留時間を決定する方法が優れていると考えられる。しかし、人為由来のCFCsは、人為由来の硝酸態窒素濃度NO3-Nと正の相関を示した。NO3-Nと異常値を示すCFCsの関係を使って、汚染経路が決定できる可能性を示唆している。一般水質のうち、SiO2とNO3-Nは、野外の流動経路、流動履歴のキャリブレーションとバリデーションの際の指標になることも分かった。SF6とCFCsの水中濃度の関係(Csf6-CFCs)とピストン流モデル、混合モデルを仮定したときの理論的なCsf6-CFCs関係を比較することで、地下水の流動のタイプが識別された。これらのことから、流動経路の分離は、酸素と水素の安定同位体トレーサーを組み込んだ地下水流動解析モデルで実施し、各経路の移動・滞留時間は、SF6年代トレーサーで決定する方法が現時点では、最も現実的であると考えられる。
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