研究課題/領域番号 |
22560510
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
藤田 裕一郎 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (90027285)
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研究分担者 |
水上 精榮 岐阜大学, 工学部, 技術専門員 (90377698)
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キーワード | 水工水理学 / 自然現象観測 / 乱流現象 / 流体 / 水圏現象 |
研究概要 |
より高精度で詳細なデータが得られるように工夫するとした定点観測では、繋留ロープと二重化した牽引ロープとの組合せで、幅数10m以上の河道であっても、足場の良い一方の河岸上から観測ボートの固定位置を設定できるようにし、3次元超音波ドップラー流速計(3D-ADV)による点計測を併用した連続計測に力点を置いて実施した結果、ADCPの時間分解能では大規模渦が順次発生している水深6m以上の箇所であっても,乱流エネルギーのカスケード過程は捉えられないこと等を明らかにした。また、範囲を拡大し測線を密にした移動観測と定点観測とによる流速ベクトルの鉛直成分の変動状況に着目し、詳細な河床状況とを突き合わせることで、上流から急激に低下する河床に沿って主流が下降流となり、それが下流河道中央部水面下の岩壁に衝突して、底面から湧き上がってくるような渦を発生させているという3次元構造を把握した。これらを現地スケールで明らかにした点は貴重な成果と考えられる。一方、陸上点から直接ADCPを水中に設置・固定して計測する方法については、候補地点とした関市鮎之瀬橋上流部においても、岩盤へのアンカーボルト埋込みやコンクリート打設等、現地改変が必要と判ったので、それに替えて上述の方法を採用した。 石礫床上の渦特性等の解明については、(独)土木研究所自然共生研究センターの実験河川が使用できなかったため、中型実験水路に桟型粗度を配置して代用し、2次元アクチュエータに3D-ADVを3種の角度で取り付けて流れを計測し、乱れ強度分布等良好な計測結果を得た。このような計測手法は今まで報告されていないものである。また、浅水流シミュレーション用の地形モデル作成については、本年度に鉛直ビーム測定を追加して得たさらに正確な河床形状データと既存データとの統合方法を可視化ソフトを用いて検討した。このため、浅水流解析は次年度に持ち越すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADCPの時空間分解能と精度を現地計測から明確にし、河川における大小規模の3次元的渦運動やそれによる流速変動の実態を高精度で把握するという主目的については、装置や方法に工夫を重ねて現地計測を繰り返し、蓄積したデータに基づいて考察を深め、かなり達成できている。水難事故軽減のための研究成果の活用について、関係機関との連携を取っており、石礫床上の流れや細粒土砂移動についても、それらの特性を明らかにしている。以上から、おおむね順調に進展していると判断したものである。
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今後の研究の推進方策 |
河川における大小規模の3次元的渦運動や流速変動の実態を高精度で把握するため、3D-ADVを併用した観測を継続し、ADCPの精度をさらに検証するとともに複雑な渦場における乱流エネルギーのカスケード過程をより明確にする。また、可視化ソフトを用いて蓄積された観測データの解析を深め、同時に上流からの流入水流の変動特性を実測してそのデータと下流のデータとを比較検討し、複雑な河床形状の効果を評価し大規模渦の発生機構に考察を加える。一方、河床形状データを統合してより精密な地形モデルを作成し、1,2のソルバーによる浅水流シミュレーションを実施して浅水流モデルの限界やその検証データとしての観測データの妥当性を吟味する。 平行して、2次元アクチュエータに3D-ADVを組み込んだシステムを今後は石礫床上の流れ計測に適用し、乱れ特性等の情報を得てマイクロバビタット機能や細粒土砂流送について考察を深める。
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