研究概要 |
堰に代表される河道横断構造物の撤去に伴うその周辺地形の変化特性について,前年度に引き続き実験的に検討した.今年度は,「研究の目的」に掲げた研究の焦点のうち(1)および(3)に関連する内容として,密度および平均粒径は同一であるが粒度分布の異なる3種の河床材料を用い,構造物の部分撤去に伴う上流側河床の変化特性特に構造物直上流に形成される局所洗掘と平衡状態の砂州形状について,一様砂を使用した場合との差異に着目して検討した.その結果,河床材料を混合砂とした場合においても,撤去後の横断構造物直上流に形成される局所洗掘の形状はいずれのケースも,一様砂の場合とほぼ同様であることが示された.このことは,構造物直上流においては流れの3次元性に起因する水深~洗掘深規模の渦が支配的な要因であり,洗掘孔の形状や規模は粒度に依らないことを示している.にもかかわらず,上流部では縦横断方向に分級が生じるとともに,粒径に応じて砂州フロントの形成位置や発達までのプロセスが異なるため,平衡状態の砂州は一様砂の場合とかなり異なったものとなることが示された.特に,混合砂の場合には,粒度の小さい粒子によるフロント形成と進行が先行し,次いでより大きな粒子によるフロント形成と進行が起こり,先行するフロントに追いつき巻き込みながら発達するという過程を繰り返す.この結果,平衡状態で形成されるフロントは,一様砂の場合に比べて構造物に近接した位置にあり,その比高は一様砂の場合ほど大きくない.このことはまた,幅広い粒度分布を有する実河川においては,十分に発達したプロント地形が形成されにくいこととの関連を伺わせている.すなわち,河道の不安定性を評価するにあたっては,従来の平均粒径粒子の移動・停止に関する限界状態のみで議論を行うことが必ずしも十分ではないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」に掲げた研究の焦点のうち,(1)構造物上流側の河道の地形変化特性の把握,および(2)構造物上流側の砂州形状を予測可能な高精度数値モデルの開発,については,2カ年で当初の計画の8割程度を終了しており,最終年度に当初の目的を十分達成できる.また,(3)物理条件と生息場成立条件の関連づけ,については,別研究経費で実施した現地観測データの解析を6割程度終了しており,(1)および(2)の結果を取り込んだ上で最終年度に目的を達成する予定である.さらに,(4)構造物下流側の河床変動,については,本研究で開発した二次元河床変動モデルを用いて最終年度に検討を実施する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究期間残最終年度であることから,「研究実施計画」に照らし,(1)砂州地形の不安定性に関する評価法の確立(河床材料特性に基づく不安定性の再定義,構造物撤去条件と不安定性との関係),(2)生息場評価指標への河床地形不安定性の取り込み,(3)構造物下流河床の河床変動と不安定性評価,を実施する.(1)については,引き続き実験的検討を主体とし,併せて実験結果を検証データとして数値モデルの調整・改良を試みる.(2)については,(1)の実施を通じて得られる地形不安定性指標を取り込んで現地観測データの再評価を試み,地形不安定性指標と従来生息場評価に用いられてきた他の指標との関係性・相互依存性などを検討する.(3)については,(1)の成果となる数値モデルを下流域に適用し,(2)の成果となる河床地形不安定性指標を取り込んだ新たな視点に基づく生息場評価を試みる.以上の成果を総括し,本研究の成果として取りまとめる.
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