揮発性有機化合物や重金属類による土壌や地下水の汚染が全国各地で顕在化している.ただ,土壌は食料生産や地下水涵養など環境財としての価値に加えて,土地として私有財産としての価値を併せ持つことが,問題解決を複雑にしている.汚染が発見されると,環境基準達成を目標にゼロリスクを目指すのか,有害物質を管理しつつリスクを低減して土地利用を図るのか,熱く議論される.本研究では,土中における有害化学物質の挙動特性に基づいて土壌地下水汚染の実サイトにおける有害物質の濃度変化を分析するとともに,汚染サイトごとに健康リスクを評価して,一連の汚染対策に合理的説明を付与するためのサイトリスク評価手法を検討した. 平成24年度には,まず昨年度に実施した地下水揚水併用型原位置封じ込め措置の効果をより詳細に検討した.ここでは原位置封じ込め措置エリアから何らかの原因で有害化学物質が漏出した場合の汚染拡散の影響を数値解析による評価し,汚染下流部に影響を与えない漏出濃度を推定した. また,廃棄物不法投棄現場で起きた揮発性有機化合物による土壌地下水汚染を対象に,原位置バイオレメディエーション実施中の分解促進効果を,昨年度に引き続いて実現場データを利用した数値解析により評価した.また,同様の手法を塩素化エチレン類による地下水汚染が生じているサイトにも適用して,原位置バイオレメディエーション適用時の分解促進効果としては自然減衰の数十倍まで期待できることを示した. 最後に,有害化学物質で汚染された複数の現場において,浄化対策期間中のリスクの時空間変動を解析して,リスクによる浄化効果の評価(サイトリスク評価)を行った.
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