研究課題/領域番号 |
22560514
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 孝幸 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (60108404)
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キーワード | リアス式湾 / 津波 / 水深変化 / 新型共振装置 / 湾内反射率 / 湾水振動 / 波高増幅度 / 周期特性 |
研究概要 |
本研究は、彎曲した湾やリアス式海岸の湾奥部を対象にして、レゾネータ(波浪共振装置)型の津波防御施設を湾口あるいは湾央付近に設けることで、湾内の津波高さを減じて、浸水災害の軽減を図ろうとするものである。2011年度の研究では、最初に昨年度の研究で津波のような30分を超える超長周期波の制御に有効であることが見出された,二重突堤形式の矩形共振装置を改良した新型共振装置の有効性を理論と実験に基づき詳細に検討した。具体的には、新規に付加した平行堤の長さの影響や湾中央部が最深部に相当するようなV字型の水深地形に対する有効性などを明らかにした。このような検討の結果、新型共振装置による津波遮断効果は、リアス式湾のように湾中央部が最深部となるようなV字型の水深地形に対しても有効であることなどが確認された。また、新型共振装置において、その岸側突堤の開口部沖側に導流堤のように付加した平行堤は、その長さを波長の1/4程度とすると最も効果的になることなどが長水路を想定した実験と理論により判明した。 このような新型共振装置の基本的な性能に関する検討に引き続き、現地リアス式湾を想定した新型共振装置の有効性をリアス式湾の平面形状と水深変化の両者を考慮に入れて数値実験に基づき検討した。想定した現地は、リアス式湾の代表例である高知県須崎湾と岩手県大船渡湾とした。検討では従来の一重突堤形式、矩形共振装置型、新型共振装置型の3種類の湾口防波堤を対象として、5分から1時間までの範囲の周期の津波を対象とした。その結果、新型共振装置方式の湾口防波堤が最も効果的で、湾奥での津波増幅度は揺り返し周期に関係なく、4~5割程度低減できることなどが判明したまた、湾奥の津波増幅度は、湾内陸域境界からの津波の反射率の影響を強く受けることが確認され、反射率を95%から80%へと低下することで増幅度はほぼ半減することなども判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度と次年度では、彎曲した湾やリアス式海岸の湾奥部における津波高さを低減するための津波レゾネータの設計法とその有効性を確認すること、さらに開発を進めた津波レゾネータが現地のリアス式湾に対して、どの程度の効果を発揮できるかについて従来の突堤形式の津波防波堤による効果との比較から明らかにしてきた。特に後者については、今回の大津波で被災を受けた大船渡湾と近未来の南海地震津波により大きな被害が予測されている須崎湾を対象にして、津波レゾネータを含む各種の構造形式の津波防波堤の有効性を設置位置の影響を含めて詳細に検討してきた。このように、本研究は、当初の計画通りにおおむね順調に進行しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、新規に提案した矩形共振装置に平行堤を付加した新型共振装置は、大船渡湾や須崎湾などの彎曲した湾の湾奥部における津波高さを4割~5割程度低減できることが判明した。平成24年度では、経済的な津波防波堤の建設を目的に、新型共振装置の平面形状の簡単化と効果の保持の両立を目標として理論と実験により検討を進める。また、湾内陸域境界への津波の遡上効果、特に境界反射への影響について水理実験を中心にして検討する。そして、最終的に湾内陸域への津波の遡上効果などを考慮して、新型共振装置や簡単化された共振装置を湾口防波堤として設けるときの湾内津波高さの低減特性を数値実験により明らかにする。
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