東北太平洋地震津波により大きな被害を受けた大船渡湾を対象にして,昨年度までに開発を進めてきた津波レゾネータの有効性を明らかにした.特に,先の大津波により倒壊した突堤形式の津波防波堤を比較のための基本構造とし,さらなる湾奥津波高さの低減が可能となるように,レゾネータ形式の防波堤配置や開口部潜堤(捨石マウンドを含む)の影響に着目して,より効果的な開口部3次元形状の在り方について数値実験と水理実験に基づき明らかにした.この際,湾の湾水振動特性や陸域境界の反射特性の影響などについても併せて検討した. 数値実験では,大船渡湾の海底地形や陸域境界をなるだけ詳細にモデル化して,今回の津波を参照して5分から1時間の津波周期を対象にして湾奥における津波高さの増幅特性などを明らかにした.津波防波堤としては,これまでの研究成果により,津波などの長周期波に対する制御効果に優れる,レゾネータ形式防波堤の範疇に属する矩形水域堤やそれを簡素化したL型堤などを採用した.このとき,開口部潜堤の有無およびその規模にも着目して湾奥津波高さの低減効果について検討を行い,従来の突堤形式による効果を含めて,より高い遮蔽効果が期待できる防波堤開口部の3次元的な構造を明らかにした. このような検討の結果,倒壊前の大船渡湾突堤形式防波堤が存在する条件下においては,湾奥部での波高増幅率は,ほぼT=850sと2300sの条件下で極大となり共振応答を示すことや,増幅率は境界反射率のわずかな増大にも敏感に反応して顕著に増加することなどが判明した.そして,防波堤開口部形状による津波の防御効果を比較すると,レゾネータ形式防波堤を湾口部に設けることで,第1次共振周期は長周期側に移行することや,湾奥部での津波高さをほぼ半減できることなどが判明した.
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