研究概要 |
感潮河道の湾曲部における流れの特徴と高濁度水塊の横断分布,シルト・粘土の沈降・巻き上げについて検討した.湾曲の上流側で流速とSSの横断分布を計測したところ,上げ潮では湾曲外側において流速が速く,SS濃度は低かった.湾曲内側では流速が遅く,高濃度のSSが観測された.また横断方向の流れは表層で外岸側に,底層で内岸側に向かっていた.湾曲上流側において2次流や,それによるSSの集積が見られたことから,筑後川感潮河道では順流によるSS輸送よりも塩水遡上によるSS輸送が卓越していると推察された. Rouseの浮遊砂濃度式を用いて水中SS濃度の再現性が最も高くなるように浮泥層の厚さと粒子沈降速度を推定した.湾曲の外岸側では浮泥層はほとんど無かったが,内岸側では満潮時に1.3mまで発達し,3潮汐を経て正味0.2mの層が形成された.Rouse分布から推定された粒子沈降速度は0.01m/sに達し,単体粒子の理論沈降速度よりも10~100倍大きい値となった.高濁度水塊中でフロックが形成されてSSが沈降しやすくなり,数時間で浮泥層が形成されたと推測される. SSの巻き上げフラックスと粘着性土の浸食速度式の比較を通じて粒子の粘着性について考察した.湾曲外岸の巻き上げフラックスは上げ潮と下げ潮で差はみられず,摩擦速度の3乗に比例していた.粘着性土の浸食速度も摩擦速度の3乗に比例するため,浸食速度式が対象とする粒子の剥離現象が浮泥の表面でも生じていると考えられる.一方,湾曲内岸では下げ潮の巻き上げフラックスは上げ潮に比べて小さく,かつ摩擦速度が0.02m/sを超えると急激に増加していた.つまり,上げ潮から満潮にかけてSSが沈殿して浮泥層が形成され,粘着性などの効果によって撹乱されにくくなっていると推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容は(1)湾曲部の流れ構造(主流と二次流,乱流強度),(2)SSの横断分布特性,(3)横断面内の水・土砂(シルト・粘土)の輸送フラックス,(4)湾曲地形の変化特性,(5)高濁度水塊が湾曲部の地形形成におよぼす影響であるが,このうち(1),(2),(4)がほぼ完了した.
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今後の研究の推進方策 |
湾曲部の単独横断面における流れと浮泥層の特徴,地形変化特性は概ね調査・解析したので,最終年度は湾曲部全体の二次流の特性,広域的な地形変化特性を調べ,以上の成果をとりまとめる.
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