河川の湾曲部では横断方向の二次流が発達することで土砂の湾曲内岸方向への輸送が起こり,砂州が形成されると言われているが,これらは理論的・実験的な研究に基づいており,実際の河川で二次流と地形変化の関係性を調査した例はほとんどない.本研究では感潮河道において潮汐流で土砂輸送が発生することに着目し,筑後川感潮河道の蛇行部において流速分布を測定し,二次流の空間構造を把握した.また測量を行って河床地形の経年変化を調べて,二次流と地形変化の関係性について考察した. 流速観測の結果,表層では流速ベクトルが円弧の接線方向に沿っているが,底層では湾曲内側を向いていた.底層で横断方向流速が湾曲外岸から内岸へ向かう二次流が現れていた.実測値と理論値との比較を行ったところ,上げ潮時には両者が整合した側線と,理論値よりも強い二次流が観測された側線が200mごとに交互に現れており,二次流が強弱を伴いながららせん状に遡上していることが分かった. 次に,多項目水質計から得られたSS濃度の鉛直分布と横断方向流速を乗じてSS横断フラックスを算出した.断面中央部から湾曲内岸にかけて底層のSSが内岸に輸送されており,河床面を遡上する際に二次流が減衰してSSが堆積すると考えられた. 測量から得られた河床地形図をみると,洪水直後は断面形の左右が対称的であるが,4ヶ月が経過すると内岸側の等深線が流心方向に膨らんでおり,湾曲内岸に堆積傾面が形成されていた.また,堆積期の初期には曲率の中心部に斜面が形成されたが,徐々に斜面が上流側に延びていった. 以上をまとめると,筑後川感潮域では潮汐流によって下流から輸送されてきたSSが二次流によって湾曲内岸側に運ばれる.そしてSSが湾曲内岸部に堆積することで斜面が形成され,一定の量が堆積するとさらに上流部へと堆積が進行してゆくと考えられ,二次流と地形変化の関係性が明らかになった.
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