本年度は、まず、路線型公共交通やSTサービスの利用が少ない茨城県内を対象として、高齢者等の利用・外出に関する基礎データの追加を行った。高齢者を対象に、経路のバリア状況と、STサービスを想定した個別輸送との間の選択に関するアンケート調査を実施し、それらの要因による外出への影響をモデル化するためのデータとした。 次に、これらの要因が外出意識に及ぼす影響について、ロジットモデルを用いたモデル構築を行った。このモデルでは、各種のバリア要素を、現況のSTサービスと同等のサービスの提供の有無を要素として分析を行った。さらに個人属性による影響について分析を行った。 その結果、まず既存研究と同様の傾向ではあるが、非分離道路では勾配等のバリア解消よりも交通量の抑制による歩行の安全を重視する傾向が確認された。また、STサービスは多少の費用が必要であっても、バリアおよび車からの危険性を解消する手段として有効であることが明かになった。しかし、高齢者の場合であっても、乗車および待ち時間が大きくなることは外出意欲を低下させる原因として重要であり、徒歩時間よりも影響が大きい傾向にあることが明かになった。従って、渋滞等で配車に要する時間の精度が低い場合や、過度の乗合い効率をねらったシステムの場合には、道路のバリアフリーの代替としての効果が低くなってしまう恐れがあると言えることがわかった。 また、外出促進のためのさまざまな公的・私的活動に関しては、茨城県日立市内の学区コミュニティが実施しているものと、市全域を対象とした活動に関する情報を収集し、そのなかで外出促進に寄与できるものの抽出を試みた。
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