研究概要 |
本研究では地方都市を対象に、居住地選択行動を誘発する魅力的な基幹公共交通の整備と、その沿線を軸としてのスマート・シュリンク(郊外からの賢い撤退)の可能性について検討する。特に欧米の多くの都市で実績のある、LRT(次世代型路面電車システム)の導入に注目し、新しい公共交通システムが都市構造の改編に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 今年度はLRT導入の実在都市を事例として挙げて、LRT導入が都市構造どのような影響を与えるのかを把握を行った。特に2007年に我が国で初めてLRTを導入した富山市を対象に、LRT沿線の土地利用変化を調べることで、LRTの土地利用誘導効果を定量的に明らかにした。研究の成果は以下の3点に集約される。 1)土地利用の変化に与える影響 LRT電停半径500mの土地利用の推移をみると、商業用地の比率が,1999年では9.1%であったが,2007年では12.4%となり,3.3%の商業系土地利用の増加が見られた。 2)人口変動に与える影響 2006年を基準に各交通モードの駅勢圏人口の推移を調べた結果、全体の傾向として減少傾向にあるものの,幹線バス,支線バスの沿線と比較して、LRT,鉄道では緩やかな減少になっていることがわかった。このことからLRT化により,沿線人口減少を食い止め,相対的に都市軸が顕在化するのではないかと推察される。 3)地価変動に与える影響 LRT沿線・非沿線の地価の推移を比較した結果、LRT導入前の2006年から導入後の2009年にかけて,地価の推移に大きな差が見られた。相対的にLRT沿線の地価は下がりにくいことが分かった。
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