本研究では地方都市を対象に、居住地選択行動を誘発するほど魅力的な基幹公共交通の整備と、その沿線を軸としてのスマート・シュリンク(郊外からの賢い撤退)の可能性について検討した。特にLRT(次世代型路面電車システム)の導入に注目し、新しい公共交通システムが都市構造の改編に及ぼす影響を分析した。 平成24年度は3箇年の研究の集大成として、基幹公共交通としてのLRT導入が集約型都市構造の実現にどこまで寄与するかを定量的に検討した。その上で、宇都宮市を対象として実現可能な都市戦略を提案した。 1)LRT導入と集約型都市構造の定量的な関係の整理 平成22年および23年の成果を整理し、時間軸上で集約型都市構造への誘導を管理する仕組みとしてロケーションマネジメント(立地誘導策)を提案した。また、平成18年に我が国で初めてLRTを導入した富山市を対象に、LRT導入が前後の土地利用や人口分布の変化を定量的に計測した。その結果に、LRT導入によって人口減少に歯止めがかかり、地価の下落が緩やかになるなど、集約化に一定の効果を与えることがわかった。 2)実在都市を対象とした施策実施可能性の検討 宇都宮市の都市計画マスタープランとの関連性をはかりつつ、公共交通政策としてLRT導入計画の可視化を試みた。具体的には3次元CGを用いてLRTが導入された際の将来都市を再現し、市民PR用のLRT説明ビデオを作製した。また、作成したLRT動画を市内の大規模イベント時に公開し、市民アンケートを行った。その結果、LRTの情報提供が市民意識の向上に寄与すること、LRTの賛否に個人特性が影響していることなどが明らかになった。これらの成果をふまえて、施策実現に向けた課題を整理した。
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