本研究は,京都東山を対象とし,地形が特徴づける景域の構造と名勝地の景観特性を,開度の概念に基づく地形的囲繞の定量的評価を通じて明らかにした.その結果,東山の寺社や名勝地の多くが近距離の山に囲繞された景域(主に囲繞角90度以上,囲繞距離500m以内)に立地していることを示し,その囲繞性の面的広がりと場所ごとの変化ならびに局所性を示した.また,東山の名勝地において,地形的囲繞が前提となって,その景観構成が成り立っている傾向を示した.具体的には,近景域での1) 斜面地の庭園利用と開放的な視点場の構成,中景域での2)背景となる山までの連続した斜面と添景の堂舎による一連の眺めの構成,3)背景となる山までの間を隠す見切りの構成,4)山並みへの俯瞰を見せる開放的な平場の構成,という景観の構成を示し,山によって囲繞された場所に立地するだけでなく,視点場空間の開放性や,眺望景観の奥行きや広がりの創出のために活用していることを示した.
|