研究課題/領域番号 |
22560532
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
小野 芳朗 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50152541)
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研究分担者 |
中嶋 節子 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (20295710)
水藤 寛 岡山大学, 環境学研究科, 准教授 (10302530)
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キーワード | 御所用水 / 御所水道 / 琵琶湖疏水 / 防火 / 延焼 |
研究概要 |
本年度は、収集した資料をもとにした京都の防火に対するシステムを検証した。基本的に近代水道が明治45年に完成するまでのシステムは、用水である。それは京都盆地の都の周縁に広がる農村地帯への河川からの灌漑用水の使用後、流されてくる下流水であり水量的に限界があり、かつ上流側の既存集落での使用が優先されていくという実態の防火システムとしては貧弱なものであった。 京都の防火の近世的システム、用水が上賀茂神社の支配であったものが、近代には宮内省に移管されるが、上流側農村の慣行水利権が優先し、御所や京都の町への防火対応が明治になっても遅滞した。これを改善すべく、明治23年琵琶湖疏水が開鑿されるが、上流側の農村と、下流の御所や町の関係は変わらず、水道施設ができるまで慣行水利権が優先した。この事実を宮内庁書稜部、京都府立総合資料館、京都市立歴史資料館の文書より実証した。 また、琵琶湖疏水に関して『全国工場通覧』をはじめとする統計資料、電話帳などを分析することで、地域ごとの産業立地特性、業種別の分布などを年代ごとに解明し、夷川発電所周辺に中小規模の機械工業、繊維工業が分布すること、大規模な機械工場が慶流橋南に立地したことなどを明らかにした。また、都市計画において工業地域としての指定を受けなかったことによって、工業地としての発展は限界を見るものの、戦後昭和40年代までその性格は引き継がれたことを把握した。 さらに、盆地地形における都市火災の延焼の様相を調べるために重要となる風況解析シミュレーションを実施している。本年度は、周囲を山に囲まれた地形における特徴的な気象現象の例として、岡山県津山地方で発生する広戸風と呼ばれる局地風を取り上げ、様々な気象条件に応じた風況解析シミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料の収集はほぼ完了し、その解析も終了した。最終年度に向けて論文、出版化する準備にとりかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に、関連論文として、日本建築学会に琵琶湖疏水建設に関わる路線決定に就いて論文掲載が決定している。また、夷川、鴨東地区に集中する水車群の水力利用の実態に関し同論文集に投稿中である。最終年度内に投稿予定のものとして、南禅寺別邸群の防火用水(庭園用水)の実態を同論文に投稿と、御所用水をはじめとする防火用水の効果に就いて建築史学会に投稿するものがある。さらに、これら成果に加えて岡山の防火体制の用水の実態を加えて、都市の水脈の効果について書籍を執筆中である。
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