研究概要 |
本年度は,これまでに構築したエコ通勤促進策を検討するためのマルチエージェント交通シミュレーションの基本システムに関して統計的な精度向上を図り実用性を高めるとともに,低排出車両への更新行動をモデル化した.具体的には,以下のような成果を得た. 1.道路交通流に関して,一日の交通需要の時間的変動を考慮して,地球温暖化問題における外部不経済の解消のための「環境税」と「ピークコードンプライシング」の相互補完的な役割を整理した.また前年に開発した「温室効果ガス排出モデル」を含む「ミクロ交通流シミュレーション」を現実道路網に適用し,都市交通政策評価への適用性を検証した.また,「温室効果ガス削減効果」および「利用者便益」を算定可能とするために,「交通行動シミュレータ」と開発した「ミクロ交通流シミュレーション」の連動について検討した. 2.一日の交通行動推計の精度向上のために,各交通行動サブモデルを見直し,パラメータ推定を行った.また出発時刻選択行動に関して,PT調査データを用いて分析し,余裕時間に関する意思決定構造についてワイブル分布を基本としたDurationモデルで表現した.一方,前年度に開発した環境問題に対する意識と社会的相互作用を考慮した「交通手段変更モデル」について,モデルパラメータ推定方法を見直し,推計精度を向上させた.さらに,「交通行動シミュレータ」に,更新した「交通手段変更モデル」を組み込んだ. 3.世帯における車両保有に関して,個別世帯を対象として,グリーンエネルギー車両(CEV)の保有意向に関するアンケート調査を実施した.この調査データに基づいて,低排出車両普及の現状を把握するとともに,低排出車両への買い替えの要因に関して検討した.さらに,環境問題に対する意識と社会的相互作用を考慮して「CEV保有意向モデル」を構築した.
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