持続可能な社会に向けて,自動車の保有・利用/電力消費の削減は我が国においても重要な課題である.そのための手段として,価格(税・料金)や人口密度(土地利用規制)のコントロールが考えられる.たとえば,郊外から中心部に人を集めることは,人口密度の増加を意味するが,人口密度を高めるとどれだけ自動車の走行距離そして交通エネルギー消費量の節減に寄与するのかについては十分明らかにされていない.Kenworthyをはじめとする空間的に集計されたデータを用いた分析では,いわゆる「集計バイアス」が発生する可能性があり,適切な関係式を推定できない.そこで近年では個票データを用いた分析が主流になっているが,その場合でも世帯の選好(自動車を好きか嫌いかといったことや,人口密度の変化に対する交通行動の変化)の多様性を無視して推定すると,いわゆるself selection biasが生じ,真の関係式を得ることができない.また空間データについては空間的自己相関の考慮の必要性が指摘されている. 本研究では,価格また人口密度による影響がどの程度あるのか?について,世帯の多様性や空間相関などを考慮し,主として弾性値という指標に着目して検討を行った. 定式化また用いるデータによって大きくばらつくが,おおむね国内外を含めた先行研究の範囲内の値が得られた.
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