研究概要 |
初年度にあたる平成22年度においては,1.関連研究のレビュー,2.所要時間信頼性評価に関するアンケート調査票の設計,3.アンケート調査の実施を重点的に行った.以下順に詳細を記す. 1. 関連研究のレビューについて 研究課題である交通所要時間の信頼性評価については,現在,国内外の研究者が精力的に研究に取り組まれている.本課題では,予め出発時刻と到着時刻が決定している鉄道が研究対象であるが,所要時間が決定していない自動車交通にまで範囲を拡大して既往研究のレビューを行った.その結果,所要時間信頼性については,所要時間の平均値とばらつき具合を表す指標(標準偏差など)によって評価する手法(平均-分散・アプローチ)と,早着と遅着の不効用を考慮して出発時刻の意思決定構造から評価する手法(スケジューリング・アプローチ)があること,またこれらの手法を併せて分析する統合アプローチに発展していることが明らかとなった.一方,所要時間信頼性への影響要因と考えられるネットワークのリダンダンシー性などが,利用者の行動に及ぼす影響については未だ十分評価がなされていないことが明らかとなった. 2. 所要時間信頼性評価に関するアンケート調査票の設計 調査方法,調査項目,調査形式については検討し,調査内容に応じた必要サンプル数を確定した. 3. アンケート調査の実施 本研究では,株式会社マクロミルの調査モニターを対象とするアンケート調査を実施した.被験対象者は,一都三県(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)の居住者であり,かつ鉄道を利用して通勤している者とした.なお回答モニターの数は5000名となった.一方,調査実施中に,東日本大震災後の計画停電に伴う鉄道運行サービスの低減が生じたことを受け,新たに調査項目を用意して,計画停電に伴う利用者の行動変化と,サービス改善に対する利用者意識についても調査した.
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