本年度の研究実績の概要は下記の通りである. 前年度末に実施したアンケートで鉄道サービスの選好意識(SP)に関する選択実験を行った.選択実験では,平均所要時間,所要時間の変動,費用が異なる2つの鉄道サービスを設定し,どちらのサービスを利用したいかを問う2肢選択を採用した.所要時間の変動については等確率で生じるという条件の下で生じ得る5つの所要時間を提示した.これら5つの所要時間から,所要時間の変動を表す標準偏差を算出しモデルの説明変数に採用した. 所要時間,所要時間の変動,運賃を説明変数とする選択モデルのパラメータを推定した結果,説明力を有するモデルが推定された.また,「所要時間」「所要時間の標準偏差」「費用」の推定パラメータを用いて,所要時間と所要時間変動(標準偏差)の時間価値を推計した結果,所要時間については36.25円/分,標準偏差もついては1.08円/分であった.標準偏差については,既往の研究結果と比べて極めて小さい値であった.本件については,データ収集の方法等を含めて今後の検討課題とした. つぎに,実行動(RP)データを用いて,出発時刻の決定行動に関するモデルを推定した.その際,所要時間・所要時間変動・費用に対する抵抗の大きさを反映していると考えられる鉄道サービス選択モデルの推定パラメータ(個々人ごとに推定している)を説明変数に用いた.その他,個々人の鉄道の利用状況(移動距離,乗換回数,鉄道利用頻度)を説明変数に用いた.パラメータの推定結果「移動距離」「乗換回数」「所要時間の抵抗値」ついては統計的に有為なパラメータが推定された.一方「所要時間変動」「費用」については有為なパラメータは推定されなかった.なお出発時刻の現況再現については十分高い性能を持っていることを確認した.
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