研究概要 |
昨年度の研究成果としては,高い蛍光強度を持ち低濃度でも変化量が蛍光分析法によって測定可能な蛍光増白剤を用いて,回分式実験だけでなく流通式の反応槽においても,生物線量計と同等の線量測定結果を得ることができるかを検討した.まず回分実験において、蛍光増白剤の蛍光強度変化率と生物線量計による紫外線線量の測定結果の相関を調べた。回分式実験においては,光触媒剤を投入して反応促進を試みた.生物線量計は大腸菌ファージQβの不活化反応を用いた。蛍光増白剤は、Disodium 4,4-bis(2-sulfonatostyry1) bipheny1(FBA-1)とDisodium4,4'-[(4-toluidino-6-morpholino-1,3,5-triazin-2yl)amino] stilbene-2,2'-disulfonate(FBA-2)の2種類を用いた。どちらの蛍光増白剤についても、透過率95%以上の溶液で、かつ紫外線線量が50mJ/cm2以下の範囲において、測定可能な蛍光強度変化が確認され、化学線量計として使用可能であることが確認された。光触媒を加えて反応促進を試みた結果は,線量計溶液の紫外透過率が70%を下回る程度に光触媒剤を投入しないと,促進効果は確認できなかった.次に小型の二重円筒管型紫外線照射装置に、蛍光増白剤溶液を通水し、蛍光強度変化率を様-な流量条件において測定した。またQβを用いた生物線量計実験も行うことによって、蛍光強度変化率から求めた紫外線線量測定結果と生物線量計測定結果の整合性を確かめた。結果として小流量の時には整合性が高いものの,流量が大きくなると増白剤溶液の変化量のばらつきが大きくなった.この理由として紫外線照射装置内の強度分布モデルを適用し、Qβ不活化率および蛍光増白剤の変化率をシミュレートしたが,結果と完全にシミュレートすることは出来なかった.今後はより反応性の高い物質の検討を行うと共に反応装置内の流動状況を詳細にシミュレートする方法を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒による反応促進の効果が低いことがわかったため,その方法に関しては一旦保留とし,蛍光増白剤のみの検討を進めていくことにする.また生物線量計,化学線量計の装置内の反応シミュレーションを詳細に行うことによって,現状の装置内紫外線線量測定の問題点や改善点を洗い出し,その改良方法を提案できる見通しがついた.本年度は,特に反応装置内の流動状況のシミュレートに力点を移動し,実用的な成果を出す方向に研究の軌道を若干シフトさせていきたいと考えている.
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